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豚の角膜を利用した人工バイオ角膜を人に移植

 5月23日の「武漢晩報」に、世界初の「豚角膜由来の人工バイオ角膜のユーザ」に関する記事が出ていました。今回はこちらの記事から一部をご紹介します。

 2010年、湖北省松滋市の黄元珍さんは、農作業の時に右目を負傷し、角膜移植が必要となった。しかし、ドナーが少なく時間だけが過ぎ、待ちきれなかった黄さんは、武漢協和医院眼科で実施し始めた「豚の角膜から作製した人工バイオ角膜の移植」の臨床試験への参加を決意をする。移植後、黄さんの右目の視力は0.4まで回復したという。
 臨床試験の実施から5年、2015年5月23日、武漢協和医院を含めた中国チームは、当該バイオ角膜製品「艾欣瞳」を北京で発表した。この商品は、既に4月22日に国家食品薬品監督管理総局が発行した医療器械登録証書を受け取り、7月から発売するという。

ドナーの豚は全員「身分証」を持つ

 中国には各種の角膜症起因の失明者は推定500万人がいるが、ドナーによる角膜移植が受けられる患者は毎年5000例程度で、約千分の一に過ぎない。多くの病院とアイバンクはドナー不足に悩んでおり、有効な角膜の代替物の研究開発は急務であった。
 専門家は動物の角膜に着目し、人間に近いサルから実験開始した。しかし、繁殖率が低く、飼育コストがかかり、供給が困難なのが難点であった。豚、牛、鳥、カモ、ガチョウなども実験し、豚角膜のパラメータはヒトに最も近く、相似度は94%だとわかった。その上に、豚が携帯するウィルスがヒトに感染しにくいことから、動物実験を繰り返し実施した結果、2010年に第一例の豚角膜からヒトへの移植手術を実施した。
 武漢協和医院眼科主任張明昌教授は、「ヒトの角膜より、豚の角膜は豊富なリソースがある上に、ヒト角膜の基本組織と酷似している。移植後、角膜の厚みと屈折度はほぼ変わらない、感覚の神経は生着できることから、知覚も回復できる。さらに、「脱細胞化技術」を用いて豚角膜の免疫原性を除去すれば、移植後の炎症反応と拒絶反応を抑えることができる」と語る。
 豚角膜の安定供給のために、深セン市で専用の養豚場が建設され、「万が一問題が発生した時のために、豚全員が「身分証」を持っている」と張教授が言う。現在豚角膜由来の人工バイオ角膜は一枚15000人民元(約280万円)で、年間10万枚を供給でき、普及すれば価格もある程度抑えられるという。

移植後の最良視力は1.2

 人工バイオ角膜が長期的に人体にどのような影響を与えるかはまだ未知数である。この5年間、中国の医学臨床実験のルールに従い、冒頭の黄元珍さんと同じように47名の患者(18歳から72歳まで)が理解と同意の上同じ移植手術を受けた。この47名全員が真菌性角膜潰瘍を患い、通常の抗菌治療による目立った効果はなかった。術前に潰瘍病変の深さを測定した上、適性の良い症例を選択し、厚みが0.3mm~0.5mmの人工バイオ角膜を移植した。こうすることで、真菌性感染の更なる進展を食い止めると共に角膜の完全性も保つこともできると張教授は語る。
 47人を追跡調査したところ、真菌性感染が再発したケースがなく、角膜の透明度も今のところが良好だという。中には視力は1.2まで回復した人もいる。また、5年前から、全国で5軒の病院でこのような移植手術を115例を行っており、有効症例数は109件、有効率は約90%とされている。

完全代替はできない

 この人工バイオ角膜は世界初の臨床実験まで完成したハイテック人工角膜製品である(張氏)が、角膜未穿通損傷のケースのみ有効である。
 角膜はカメラのレンズのように像の形成には重要な役割を果たし、濁ったり、損傷したりすると失明の恐れがある。また真菌性角膜炎は、治療困難で失明に至らせるケースは非常に多い。薬でコントロールできなくなったら、角膜の移植か眼球の摘出しか方法がないという(張氏)。中には角膜未穿通損傷の症例は約40%占めることから、供給源の問題さえ解決できれば、全国で約200万人の患者はこの豚角膜由来の人工バイオ角膜技術によって再び光を見ることができるとしている。

 角膜の再生医療といえば、日本ではiPS細胞が脚光を浴びていますが、中国の研究者も様々なアプローチで取り込んでいるようですね。