出典:中国科学報(2014年6月25日)
上海の復旦大学によれば、医学神経生物学国家重点実験室の沙紅英研究者らは安徽医科大学の研究チームと協力で、遺伝性ミトコンドリア病の治療研究分野で突破的な進展を取得したという。本研究成果は、「Cell(セル)」誌に掲載されている。
専門家によると、ミトコンドリアは細胞に必要なエネルギーを産生する細胞小器官であり、自分のDNA(mtDNA)を持ち、母親の卵子を介して子に遺伝する。卵子におけるミトコンドリアの突然変異は母系遺伝性疾患を引き起こす可能性がある。このような突然変異は、脳、筋肉、心臓などエネルギー代謝の盛んな器官に大きな影響を与え、一連の母系遺伝性疾患に及ぶ。現在は治療法が少ないため、薬剤によって諸症状の緩解が得られるが、完全治癒はできないという。
極体とは、卵母細胞が減数分裂して卵子となる過程で卵外に放出される小さな細胞である。沙紅英研究者らは極体の生物学的特性に基づいて、極体中の遺伝物質を用いて細胞質中の遺伝物質に代え、二種の異なるミトコンドリア遺伝子を持つマウスにミトコンドリア置換研究を行った。研究結果により、第一極体の置換で生み出した子マウス一代目及び子マウス一代目が産んだ子マウス二代目の体内には、いずれも細胞質ドナーマウスのミトコンドリアだけを含み、できる限り異質ミトコンドリアを回避したということがわかった。また、比較のために、研究者達は極体移植、原核移植と紡錘体の化合物移植を同じ尺度で行い、極体の優位性と潜在的な臨床応用価値を証明し、積極的且つ完全にミトコンドリア母系遺伝性疾患を予防することが期待される。
「動物モデルで良い結果を得られたが、臨床試験に適切な証拠を提供するため、極体ゲノム置換技術がヒトへの応用を研究し続け、得られたヒト胚は普通のIVF胚と詳しく且つ長期的に比較しなければならない。」と沙紅英氏は指摘した。
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