中華人民共和国最高人民法院、中国人民銀行および中国銀行保険監督管理委員会は、先日、金融消費者の正当な権利と利益を保護し、金融リスクを防止および解決し、金融業界の持続的かつ健全な発展を促進するために、「金融紛争の多重解決メカニズムの構築を全面的に促進することに関する意見」(以下、「意見」)を共同で発行しました。
今回はその概要についてご紹介します。
金融紛争の多重解決メカニズムの案件範囲と調停協議の司法確認制度
意見は、金融紛争の多様化した解決メカニズムの案件範囲と調停協議の司法確認制度を定めており、平等な民間企業と商業団体との間の金融業務から生じる契約および権利侵害責任紛争は「金融紛争調停組織」に調停を申請することができると規定しています。金融紛争調停機関の調停人を通じて調停された調停協議は、民事契約の性質をもっています。
また、調停人および金融紛争調停機関によって署名および封印された後、当事者は、管轄権を有する人民法院に有効性の確認を申請することができます。
人民法院によって確認された明確な給付主体と給付内容のある調停協議において、一方の当事者が履行を拒否する場合、他方の当事者は人民法院に強制執行を申請することができます。
金融紛争を多様化する解決メカニズムのワークフローの標準化
意見では、金融紛争を多様化する解決メカニズムのワークフローの標準化を定めています。
人民法院は、金融紛争事件の受理と審理の際に、「調停優先、調判結合(すなわち、調停が優先されたうえで、調停と判決を組み合わせる)」の原則を実施し、当事者が金融紛争調停機関を通じて紛争を解決するよう指導するものとします。 各人民法院は、金融紛争の多重解決メカニズムの構築の役割を果し、多重解決メカニズムと訴訟サービスセンターの構築を組み合わせる必要があります。
各部門協力の強化、金融紛争データベースを構築
さらに、意見は、各部門が協力を強化し、金融紛争の多様な解決メカニズムが確実に改善すべきことを強調しています。
金融紛争の情報化のレベルを高め、金融紛争の典型的事例や金融クレームのデータベースを構築および改善し、司法と金融情報の共有を深め、多様化した金融紛争解決において積極的な役割を十分に発揮する必要があるということです。
金融紛争解決の多重メカニズムのワーキンググループを設置
最高人民法院の民事審判第二庭、立案庭、中国人民銀行金融消費権益保護局と中国銀行保険監督管理委員会の消費者権益保護局は、金融紛争解決の多重メカニズムを構築と協調するため、金融紛争解決の多重メカニズムのワーキンググループを設置する予定となっています。
調停制度の改革を模索する中国の今後の動向に注目
一般的に、中国の金融紛争では、債権と債務の関係は明確であり、抵当担保など債権保護措置も十分であり、契約の証拠は堅実です。
ただし、債務者は常に訴訟を通じて返済期間を延期し、一部は訴訟の前後に資産を譲渡することも存在しているのが実情です。
金融機関によって訴えを処理し、第三者機関による調停をし、金融管理部門の下で監督・指導するといった、訴訟と調停とを一貫した多重的な紛争解決メカニズムを確立することは、金融管理部門、司法機関、社会組織、および金融機関が協同で機能を発揮するという利点があります。
近年、調停制度の改革をめぐって様々な模索をしている中国では、金融紛争解決の効率を高めることを企図して、各紛争処理手続の横断的連携を図る「大調停メカニズム」の構築・運用が期待されています。
中国での金融ビジネスに携わる方々は、今後の動向にも注目しましょう。
(日本アイアール B・Y)
- 経済・金融関連の中国語翻訳サービスのページはこちら