民法総則中国で2017年10月1日、「民法総則」の施行が開始されました。これは、今年3月の第12期全国人民代表大会(全人代)第5回会議で審議・可決されたもので、中国初の民法典の総則となります。
従来、中国においては民法について「民法通則」「物権法」「契約法」「不法行為責任法」などの個々の法律しか存在しておらず、各法律間に矛盾点なども見られることから、統一された民法典の必要性が指摘されてきました。これを受けて制定されたのが今般の「民法総則」であり、今後は順次各編の編纂を進め、2020年を目処に民法の法体系を整備していく考えです。

「民法総則」は「基本規定」「自然人」「法人」「非法人組織」「民事権利」「民事法律行為」「代理」「民事責任」「訴訟の時効」「期間の計算」及び「附則」の全11章、206条から成ります。
なお、第11条に「民事関係について、その他の特段の定めがある場合には、当該法律を適用する」と規定されていることから、会社法、知的財産権法、保険法、証券法などの特別法については、民法総則と整合しない部分がある場合、特別法が優先して適用されます。

注目すべき点として、以下の内容が挙げられます。

民事紛争事件を解決するにあたり、法律に定めがない場合には慣習を適用できるが、公序良俗に反してはならない(10条)

慣習の適用は日本の民法などにも定められている規定ですが、中国でも、事件の多様化に伴い、公序良俗に反しないかたちでの慣習の適用が認められることは紛争案件の処理において有用であると考えられます。もっとも、その分、外資系企業にとっては「慣習」をより深く理解することが求められるので注意が必要です。

個人情報を保護し、個人情報の不法な収集・使用・加工・転送・売買・公開を禁止する(111条)

インターネットの普及が急速に進展している中国ですが、個人情報保護に関する基本法が存在しないため、本条は重要な規定であるといえるでしょう。これを基に、関連法が定められる可能性も考えられます。また、外資系を含む各企業にとっては個人情報保護制度の策定が急務となってくるでしょう。

データ・ネットワーク上の仮想の財産の保護について定めがある場合は、これに従う(127条)

いわゆるビットコインなどの問題に関係してくる条項であると言えます。

訴訟時効の期間を3年とする(183条)

最も重要な変更点の1つです。訴訟時効が従来の通則における2年から3年へ延長されたため、権利者の権利がより長期間保護されることになりました。例えば債権回収等において、債権者にとっては、訴訟による紛争解決が今よりも有利になる可能性が高くなります。

民法総則にはこれ以外にも外資系企業にとって重要な点が含まれていますが、従来の民法通則や現行の会社法と大きく変わっているわけではないようです。とは言え、相違点をしっかりと押さえ、不明な点については法律の専門家に確認を取ることが必要となってくるでしょう。

※民法総則の中国語原文はこちら

(日本アイアール A・U)


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