2017年11月4日、第12期全国人民代表大会常務委員会第30回会議において、不正競争防止法の改正が可決されました。これは1993年に同法が制定されてから初の改正となり、インターネット分野における不正競争行為について規定するなど、時代の変化を反映した改正となっています。罰則の強化も特徴と言えるでしょう。改正法は2018年1月1日から施行されます。
不正競争行為については第二章で規定されていますが、個々の行為の具体的な内容についてかなりの変更が施されています。以下、不正競争防止行為について旧法と新法を比較してみましょう。
不正競争行為の類型 | 旧法(1993年12月1日施行) | 新法(2018年1月1日) |
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混同惹起行為 | 第5 条 事業者は以下に列記する不正手段を用い市場取引を行い、競争相手に損害を与えてはならない。(1)他人の登録商標を盗用すること。(2)勝手に著名商品の特有な名称、包装、デザインを使用し、または著名商品と類似の名称、包装、デザインを使用して他人の著名商品と混同させ、購入者に当該著名商品であるかの誤認をさせること。(3)勝手に他人の企業名称または姓名を使用して公衆に当該他人の商品であるかのを誤認させること。(4)商品の上に品質認定標識、優秀著名標識など品質標識を偽造し盗用し、または原産地を偽造して公衆に誤解させる商品品質の虚偽表示をすること。第6 条 公共企業または法により独占地位を有している事業者は他人に指令しその指定する事業者の商品を購入させてその他の事業者の公正競争を排除してはならない。第7 条 政府及び所属部門は行政権力を乱用して、他人に指令しその指定する事業者の商品を購入させ、その他の事業者の正当な経営活動を制限してはならない。政府及び所属部門は行政権力を乱用してその他の地方の商品が本地域の市場に参入し或いは本地域の商品がその他の地方の市場に参入することを制限してはならない。 | 第6条 事業者は以下に列記する混同行為を行い、他者の商品若しくは他者の存在と特定の関係を有しているよう人々を誤導してはならない。 (1)他者が一定の影響力を有する商品名称・包装・デザインなどと同一若しくは類似するマークを無断で使用すること。 (2)他者が一定の影響力を有する企業名称(略称・称号などを含む)・社会組織の名称(略称などを含む)・姓名(ペンネーム・芸名・訳名などを含む)を無断で使用すること。 (3)他者が一定の影響力を有するドメインの主体部分、ウェブサイトの名称、ホームページなどを無断で使用すること。 (4)その他、他者の商品若しくは他者の存在と特定の関係を有しているよう人々を誤導するに足る混同行為。 |
商業賄賂行為 | 第8 条 事業者は財産物品またはその他の賄賂手段を用いて商品を販売或いは購入してはならない。相手組織或いは個人に記帳しない割引金を与えた場合、賄賂行為とみなして処断する。相手組織或いは個人は記帳しない割引金を受け取った場合、収賄行為とみなして処断する。 事業者は商品を販売或いは購入する場合、明示の方式によって相手側に割引を行い、仲介人にコミッションを与えることができる。事業者は相手側に割引を行い、仲介人にコミッションを与えた場合、必ず事実どおりに記帳しなければならない。割引またはコミッションを受けた事業者は必ず事実どおりに記帳しなければならない。 |
第7条 事業者は財産物品またはその他の手段を用いて以下に列記する単位若しくは個人に賄賂を行い、取引の機会若しくは競争上の優位を手に入れようとしてはならない。 (1)取引相手側の従業員 (2)取引相手側が関連事務を委託している単位若しくは個人 (3)職権又は影響力を利用して取引に影響を与える単位若しくは個人。 事業者は取引活動において、取引の相手方に明示する方式で割引を行い、又は仲介人にコミッションを支払うことができる。事業者が取引活動において、取引の相手方に明示する方式で割引を行い、又は仲介人にコミッションを支払う場合、事実どおりに記帳しなければならない。割引又はコミッションを受けた事業者も事実どおりに記帳しなければならない。 事業者の従業員が賄賂を行った場合、事業者の行為とみなされる。但し、当該従業員の行為と事業者が取引の機会若しくは競争上の優位を得ようとしていることが無関係であることを事業者が証拠を挙げて証明できる場合はこの限りではない。 |
虚偽宣伝行為 | 第9 条 事業者は広告またはその他の方法を用いて商品の品質、成分、性能、用途、生産者、有効期間、産地などに対し公衆に誤解を与える虚偽宣伝を行ってはならない。 広告事業者は明確なまたは知りうるべき情況のもとで虚偽の広告を代理、設計、制作、公布してはならない。 |
第8条 事業者はその商品の性能・機能・品質・販売状況・ユーザーの評価・過去の受賞歴などについての虚偽や人々を誤解させるような商業宣伝により、消費者を騙し、誤導してはならない。 事業者は虚偽の取引などを設けることにより、その他の事業者が虚偽若しくは人々を誤解させるような商業宣伝を行うことを助けてはならない。 |
営業秘密侵害行為 | 第10 条 事業者は以下に列記する手段を用い商業秘密を侵害してはならない。 (1)窃盗、誘引、脅迫またはその他の不正手段を以て権利者の商業秘密を得ること。 (2)前項に定める手段を用いて獲得した権利者の商業秘密を披露、使用しまたは他人に使用を許諾すること。 (3)取り決めまたは権利者の商業秘密保守に関する要求に違反して具有している商業秘密を披露し使用し、或いは他人に使用を許諾すること。 第三者が前項に該当する違法行為であることを知りながら或いは知りうる状態で、他人の商業秘密を獲得し使用し或いは披露した場合、商業秘密を侵害するとみなされる。 本条でいう商業秘密とは公衆に知られていない、権利者に経済利益をもたらすことのできる、実用性を有する、かつ、権利者が秘密保守措置を取った技術情報及び経営情報をいう。 |
第9条 事業者は以下に列記する商業秘密侵害行為を行ってはならない: (1)窃盗・賄賂・詐欺・またはその他の不正手段を以て権利者の商業秘密を得ること。 (2)前項に定める手段を用いて獲得した権利者の商業秘密を披露、使用しまたは他人に使用を許諾すること。 (3)取り決めまたは権利者の商業秘密保守に関する要求に違反して具有している商業秘密を披露し使用し、或いは他人に使用を許諾すること。 第三者が、商業秘密の権利者である従業員・前従業員、若しくはその他の単位・個人が前項に該当する違法行為を行っていると知りながら或いは知りうる状態で、他人の商業秘密を獲得し使用し或いは披露した場合、商業秘密を侵害するとみなされる。 本条でいう商業秘密とは公衆に知られていない、商業的価値を有し且つ権利者が秘密保守措置を取った技術情報及び経営情報をいう。 |
懸賞景品付販売行為 | 第13 条 事業者は以下に記載する懸賞景品付販売をしてはならない。 (1)懸賞があることを偽る、或いは意図的に内定者に懸賞を得させる詐欺方式を用いて懸賞景品付販売をすること。 (2)懸賞景品付販売の手段を利用して品質悪い商品を高価格販売すること。 (3)抽選方式による懸賞景品付販売の場合、一等賞の金額が5千元を超えること。 |
第10条 事業者が行う懸賞景品付販売に以下の状況が存在してはならない: (1)賞の種類・賞品との引き換え・賞金額若しくは賞品など、懸賞景品付販売の情報が不明確で、商品との引き換えに影響すること。 (2)懸賞があることを偽る、或いは意図的に内定者に懸賞を得させる詐欺方式を用いて懸賞景品付販売をすること。 (3)抽選方式による懸賞景品付販売の場合、一等賞の金額が5万元を超えること。 |
信用毀損行為 | 第14 条 事業者は虚偽の事実を捏造し散布して競争相手の商業的名誉或いは商品の信用を侵害してはならない。 | 第11条 事業者は虚偽の情報若しくは誤導性の情報を捏造したり広めたりすることにより競争相手の商業的名誉或いは商品の信用を侵害してはならない。 |
インターネット上の不正競争行為 | 第12条 事業者がネットワークを利用して生産経営活動に従事する場合、本法の各項の規定を遵守しなければならない。 事業者は、技術的手段の利用、ユーザーの選択への影響若しくはその他の方式により、他の事業者が合法的に提要するネットワーク製品若しくはサービスの正常な運用を妨害し損なう以下の行為を行ってはならない。 (1)他の事業者の同意を得ずに、その合法的に提供するネットワーク製品若しくはサービスにおいてリンク挿入・強制的なアクセス先へのジャンプを行うこと。 (2)誤導・詐欺・脅迫によりユーザーに他の事業者が合法的に提供するネットワーク製品若しくはサービスの修正・シャットダウン・アンインストールを行わせること。 (3)悪意により、他の事業者が合法的に提供するネットワーク製品若しくはサービスと互換性を持たせないこと。 (4)その他、他の事業者が合法的に提供するネットワーク製品若しくはサービスの正常な運営を妨害又は損なう行為。 |
なお、旧法のうち商標法、独占禁止法などと重複する内容は削除されています。
また、不正競争行為を行った場合の罰則強化も今回の改正の特徴です。例えば営業秘密侵害行為を行って場合の罰金は、旧法では「1万元以上20万元以下」でしたが、改正後は「10万元以上50万元以下、状況が深刻な場合は50万元以上300万元以下」と大幅に引き上げられています。
※改正版の不正競争防止法の中国語原文
はこちらをご参照ください。
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